腰痛について

腰痛について

腰痛は日本国内においては、40歳以上の約2800万人の人が抱えている症状であり国民病とも言われているほどに非常に多くの方が悩んでいる症状です。当院でも初診で腰痛を訴えて来院される方が多いですが、腰痛と一言でいえども原因が非常に多岐にわたりますので、腰痛の治療を行う際には何が原因となっているのかを見極めるのが大きなポイントです。

腰痛の原因を見極め、原因に対して適切な処置をしなければその場で痛みが取れたとしてもまた再発してしまい、同じ繰り返しになってしまいますので、全ての症状にも言えることですが特に腰痛に関しては原因の把握が重要です。

以下に当院でよくみる腰痛の原因をお伝えします。

筋肉、筋膜由来の腰痛

こちらの腰痛は男性によく見られるパターンです。デスクワークや運転などで長時間座っていたりすることで同じ姿勢が何時間も続く、あるいは立ち仕事や力仕事で腰部の筋肉を酷使する人によく見受けられます。

これは同じ筋肉が使われることで(姿勢を保つのも筋肉を使っています。悪い姿勢であればあるほどに酷使されます)、その部分が虚血(血流が悪くなる)することで疲労物質である乳酸が蓄積して痛みが引き起こされます。本来であれば乳酸が溜まったらミトコンドリア内で酸化させて再びエネルギーとして使えるようにしますが、エネルギーとして使う量よりも筋疲労で乳酸が作られる量が多いと消費しきれないために乳酸が蓄積して筋疲労が進み虚血状態になり痛みが引き起こされます。

この原因に対しては、血流の悪い部分は冷えていたり、筋肉が部分的に固まって硬結というグリグリしたものが患部周辺に診られるので、それを改善させてあげれば問題ありません。患部周辺の硬いところを触診で見つけ出して、それが緩まるような治療を行えばこの症状は比較的早く改善します。

このケースはあまり改善するまで時間はかかりません。1回で改善する人もいますし、多くは3回もあれば十分に効果を感じ改善していくパターンがほとんどです。患者層的には圧倒的に男性に多く20~30代の人に多く見られます。

骨格由来の腰痛

骨格由来とは、よく聞き覚えがあると思いますが骨盤の歪みや背骨の歪みからくるものです。こちらは男性と女性は半々くらいで20~40代前半くらいの方に見られます。

骨盤の歪みは立っている姿勢や座っている姿勢がどちらか片方に常に負荷がかかっていると起こります。どちらか一方に負荷がかかるとお尻の筋肉が負荷がかかっている方がとても硬くなります。また、お尻には腰とのつなぎ目である仙腸関節や、足とのつなぎ目である股関節といった大きな関節も存在しますので、お尻周りの筋肉が硬くなると腰痛や足の張りまでも感じてくるようになります。

そのことで、さらに硬い方は動きも悪くなるので無意識に代償的な動きをするために益々硬さが左右で異なってきてバランスが悪くなります。そうなると骨盤が歪む状態になります。

また、女性においては子宮や卵巣といった骨盤内臓器が男性よりも多くありますので、それらを守るために、あるいは出産などの都合で骨盤の角度が男性よりも広くなっていて、多少ではあるものの動きやすいこともあり、骨盤の歪みが起こりやすくなっています。特に経産婦さんであれば、出産された後は産道を広げるために本来は歪まないように締まってある靭帯が緩みますので、非常に歪みやすい状況にあります。(出産の有無にかかわらず構造的に歪みやすくなっています)

背骨の歪みに関しては、もともと側弯がない限りは骨盤の歪みが原因となっています。骨盤は背骨の土台となっていますので、骨盤が歪めば背骨もその歪み具合に合わせて調節を行いますので結果的に背骨が歪んでいきます。

側弯に関しては、病気が原因でニ次的に起こるものと、特発性といって原因が不明なものの2種類があります。病気が原因のものは原因となる病気の症状が他にも出てきますので問診段階で鑑別はある程度はできます。病気が疑われる場合は鍼灸治療が可能か否かを判断し、医療機関の受診も必要と判断すれば受診をお願いし、可能なものであれば医療機関と並行して治療を行います。

特発性のものは側弯そのものは手術を行わなければ治ることはありませんが、側弯による痛みは改善することができます。実際、側弯でも痛みが出ていない人も多いので、痛みや不快感を取り除けば側弯があったとしても生活上は問題ないでしょう。また、思春期側弯という10歳以降に発症するものもあり、当院では治療の経験もありますが思春期側弯は早く治療を始めることができれば、側弯の弯曲自体もかなり元に戻ることは可能です。多くは女児に発症します。(当院で治療を行なった女児は、2回の治療後に整形外科でレントゲン撮影を行い医師からも側弯のカーブが以前より改善していると診断されました)

上記が原因の治療に関しては、お尻の筋肉の硬さの左右差が非常に大きいため、それをまずは同等に戻るようにお尻周りの筋肉の硬さを全て取り除きます。特に仙骨周りに硬結が3~4つほど必発で出てくるので、それを緩めます。お尻周りの筋肉の硬さが改善されれば骨盤が硬い筋肉に引っ張られて歪むことがなくなるので、自然と骨盤の歪みや背骨の歪みが取れて腰痛が改善していきます。(側弯も同様です)

婦人科疾患由来の腰痛

生理痛や生理不順、更年期症状、卵巣嚢腫、子宮筋腫など婦人科疾患がある女性の腰痛は、ほぼ全てと言っても過言ではないくらいに腰痛の原因は婦人科疾患にあります。

婦人科疾患の原因となる子宮や卵巣は骨盤内臓器と呼ばれ、骨盤の中に存在します。骨盤内臓器の変調や不調の信号は、仙骨にまずは入力されてその後は脊髄を上って脳に入力されて、種々の反応を起こします。一部の入力は脳まで至らず仙骨からそのまま再度骨盤内臓器へと出力されます。

脳は体の各部分から送られてくる信号が、基本的には全て脊髄に入力されてから脳に至るので、筋肉由来の痛みであろうが、内臓由来の痛みであろうが、同じ経路から信号を受け取ります。そのため、脳が骨盤内臓器からの信号を受け取っても骨盤内臓器からの信号なのか、腰部からの信号なのか正確な判別はできません。痛みは基本的には生活上、圧倒的に筋肉や皮膚など体表からのことが多いので、そのために本当は骨盤内臓器の卵巣や子宮からの痛みの信号だとしても、いつもの信号だと思い腰部からの痛みと認識してしまい、腰部に痛みがあると認識してしまいます。

そこで腰が痛い、という状態になるのですが、確かに脳が腰が痛いと感じれば生体の防御反応として筋肉を硬くさせて身を守ろうとするので、腰部周辺の筋肉は硬くなります。ただし、真の原因が婦人科由来のものならば、硬くなっている腰部の筋肉を緩めたとしても婦人科疾患の改善をしなければ再び同じ反応を繰り返し、腰痛を抱えることになります。

婦人科疾患由来の腰痛のタイプは、よく下腹部の痛みも抱えていることも見受けられます。痛みまでいかなくても、引き連れ感や引っ張られる、圧迫されるなどの違和感を感じていることがあります。これは、ホルモンのバランスがYゾーンにある鼠径靭帯(そけいじんたい)を収縮させてしまうのが原因です。鼠径靭帯が収縮すれば、子宮が鼠径靭帯に向かって引っ張られるために痛みや違和感が起こります。

これらの腰痛の治療は、婦人科疾患の治療を行えば改善していきます。子宮内膜症や手術が必要なくらいの膿腫や筋腫を除けば、それ以外は鍼灸単独でも高い効果が出ています。全ての婦人科疾患で大切なことはホルモンバランスの調整を行うことです。では、どのようにしてホルモンバランスを整えるのかというと、子宮や卵巣の婦人科臓器は東洋医学では腎として捉えます。なので、腎を治療していくのですが、腎でも病態によって分類分けを行います。例えば、更年期障害で熱が上にのぼる場合は腎の陰が少なくなったことで腎陰虚の状態になったがために起こる症状ですので、腎を治療しつつも陰虚が整うように治療をしていきます。

そのようにして腎を中心に硬くなった腰部周辺の筋肉も緩まるような治療を施します。また、婦人科疾患では自律神経への影響も強いために自律神経の乱れがかなりのケースで見られますので、自律神経も同時に整えていきます。

治療期間としては、最も個人差が大きな症状とも言えるので、本当に一人一人が異なります。まずは週に1度の治療を3~5回行い、そこでどのくらい改善されたかを判別して、腰痛が初診の段階を10としたら3か4くらいまで落ち着いたら、次は生理後に3回様子を見ます。3回の理由としては3回経過を診れば左右の卵管を必ず通るために、見逃しがないからです。なので28日周期として28×3で84日(約3ヶ月)の経過観察を行い、何事もなければ改善したと判断します。

腎機能由来の腰痛

腎機能が原因の腰痛は40代後半以降の男女の方々に見られる傾向が多いです。主に症状としては疲れやすい、むくむ、トイレが近い、冷えを感じるなどが腰痛と併発してあります。

まず初めに、腎臓の昨日は体内の老廃物を排出する臓器です。腎臓内の糸球体という血管が球体状になっている部分で不要なものが濾過されて尿が作られます。そして尿はご周知の通りそのまま膀胱へと渡り、一定の量になれば排尿反射が起こり尿が排出されて体内の不要物が除去されます。

この機能が低下してしまうと、本来腎臓で濾過されて排出されるべき不要物が再度体内を巡ります。老廃物の中には様々な物質がありますが、それらは浸透圧を変化させて血液中の水分が組織へ流れてしまいます。通常、血液内の物質と血管の外にある組織の物質はバランスよく保たれていて、水分の行き来が浸透圧により適正に保たれるのですが、不必要なものがあると浸透圧が変わり水分は濃度が低い方へ流れて一定にバランスを保とうとするので、血管から水分が漏れて(多少の物質も漏れます)組織中に留まり、それがむくみとなります。

そして、むくみは毛細血管や毛細血管で吸収しきれない場合はリンパ管を通って静脈に注ぎ、組織中の不要物は回収されますが、あまりにも不要物が多い場合や毛細血管やリンパ管の状態により回収しきれずにずっと組織中に留まってしまうと、いわゆるむくみという状態になります。

また、東洋医学の話になりますが、むくみは水と捉えます。水は体を冷やす性質がありますので、腎機能が低下して体内にある不必要な水が多くなると、それらを外に排出しなければ通常よりも水が多く冷えるもとがたくさんある状態なので体が冷えてきます。すると、冷えを感じるばかりでなく、体の防衛機能が働いて冷えを体外へ出そうとし、水分を多く体外へ排出するには汗や涙や便よりも小便で排出するのが最もたくさん出せて効率が良いのでトイレの回数が多くなります。さらに、東洋医学では腰部は腎として診察します。腰痛があると筋肉や骨格系の原因でなければ、まずは婦人科や腎機能を考えます。ちなみに、婦人科も実は腎に属します。なので、腰痛は腎ととても深い関連があるのです。

以上を踏まえると、腎機能由来の腰痛は、腎機能が何かしらの理由で低下して不要物を排出する能力が低下し、不要物が体内を巡って水分代謝を悪くしそれに伴いむくみや冷え、トイレの回数が増えるなどが付随してきます。

この治療は、当然ながら腎機能の回復をまずは優先させます。腰痛をはじめ冷えやむくみなど付随する症状は全て腎の機能低下によるものなので、腎を回復させれば症状は改善します。

腎は腰部にある腰方形筋という筋肉に最も反応が出てきます。その筋肉の一部に機能低下の程度により、しこりのような硬結が悪ければ悪いほどに診られます。その反応をいかに改善していけるかが全てです。まずは脊柱の腰椎2番の詰まりや痛みを取り除き、次に足にある腎のツボを使い腰部の硬結を緩めていきます。普通レベルの低下具合ならばこの時点で痛みや高潔は取れますが、あまりにも程度が強いとこの処置だけでは改善せずに、腰部にあるもう一つの腎のツボを追加して緩和させていきます。

毎回の治療で腰部の痛みや硬結を確認して、それらが消えるまで基本的には同じ視点で処置を繰り返します。大まかではありますが、軽い人は3~5回、中程度の人は5~8回、重度に人では8回以上は少なくともかかります。そこまでこの手の原因の腰痛は根が深いので、治療の回数は必要になりますが、それでもそこを改善させないとずっと腰痛を繰り返すばかりか徐々に症状が増悪することもありますので、治癒まで他の原因の腰痛よりも時間はかかりますがきちんと改善しきることが重要です。

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