ストレスを受けた時に脳内で起きていること

現代ではストレス社会と言われてきて、それが当たり前のようになってきました。

ストレスは色んな場面で発生します。例えば満員電車や苦手な人との付き合い、家族内の問題、職場の問題、自身の病気、多忙など考えると相当多くの場面でストレスを感じている人は多いのではないでしょうか。昨今では新型コロナウイルスで自粛や活動制限などで、さらにストレスがかかる状況にもなっています。

ではストレスを感じた時に私たちの頭の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか。

ストレスを受けると影響する脳の領域

ストレスを受けると脳の前頭前野という領域の血流が低下します。

前頭前野とは額の後ろにあり、脳の前部にある”脳中の脳”と呼ばれるほど、記憶や感情コントロール、行動の制御などを司っている高機能な領域です。

ちなみに、高機能(脳では高次機能と言います)とは対照的なのが、より本能的な機能である呼吸や心拍、覚醒などを司どる脳幹や海馬、扁桃体、辺縁連合野、視床、視床下部などの大脳辺縁系と呼ばれる領域があります。

前頭前野の働き

前頭前野は人間の進化の中で最も新く進化した領域であります。

新しく進化した大脳皮質というグループの中の一部が前頭前野なのですが、前頭前野は大脳皮質の約1/3ほどの領域を占めています。前頭前野は他の脳の領域に比べて発達のスピードが遅く、およそ20歳前後で完成するとされています。

前頭前野は集中力を高めて一時的な記憶を行ったり、精神活動のコントロールをしてその場面場面に合わせた行動を取れるように調節することで、集中力を高めたり、意思決定をして物事を判断したり、何かを想像したり、計画を立てたりすることなどができるのです。

前頭前野がストレスを受けるとどうなるのか

ストレスを受けると前頭前野の血流が低下して、視床下部や扁桃体などの本能的な部分を司どる領域の支配が相対的に高まって、その結果として本来の前頭前野の働きである記憶や感情や行動のコントロールが効きにくくなります。

すると、普段はいわゆる理性というもので抑え込んでいた本能的な感情が強く出てくるようになり、強い不安感を感じたり過食をしたり散財したりといったような行動を取りやすくなります。

このような行動は日常生活においては、何かとトラブルや不便の原因に要素となり得ます。

ストレス時における前頭前野の変化

ストレスを感じると、脳内では体を戦闘態勢にする必要があるため(人間も動物なので本能的な反応を取ります)、ノルアドレナリンやドーパミンといった身体活動を高めるための物質が脳全体で放出されます。

前頭前野の領域でそれらの物質の放出量が高まって(正確には一部は回収されるが、放出が多いと回収しきれないので濃度が高くなる)いくと、前頭前野での神経細胞同士の情報のやり取りが少なくなり、更に濃度が高い状態が続くと、やがてやり取りがなくなってしまいます。

そのような状態になると、他の領域とのやり取りにも影響して脳全体の情報交換にも影響していきます。

そして脳全体の活動の変化という情報を下垂体という部分が受け取ると、下垂体はホルモンの分泌の指令をする場所なので、ストレスに対抗するホルモンを副腎で作るように指令を出して、副腎はその指令の通りにストレスホルモンを作り分泌して、それが血流に乗って脳へ届くとさらにノルアドレナリンやドーパミンなどの物質が放出されて、ますます脳全体の機能の協調が取れなくなっていきます。

そうなってしまえば、さらに前頭前野での活動が低下して本来の働きをすることが難しくなり、理性というものが抑えられなくなっていきます。

一度ストレスを受けると無限ループになってしまうのか

ストレスに対しての反応は、前述した通りどんどん増えていくこともありますが、もしそれが無限に増えていき全く処理ができないとなると、普通には生きていけません。そのために、それらを処置する仕組みが備わっています。

脳内ではノルアドレナリンやドーパミンが放出されると、それらの役割を果たせるようになったらその後は分解酵素によって分解されて、それらを再度放出できるようにまた神経細胞で熟成されます。よって一時的にはノルアドレナリンやドーパミンの濃度が高まりますが、その後はまた一定水準まで下がります。

本来はこのような仕組みで一定の働きになるように調整されています。

ストレスを処理できる人と、できない人の違い

本来の仕組みが働けばストレスに対して適切な処理ができるため、精神疾患などに罹患することもありませんし、ストレスを抱え込みすぎてどうにもならないということにもなりませんが、しかしながら一定数はそのようなことで苦しんでいる人がいるのは以下の理由があるとされています。

遺伝的な要素

ストレスに弱いとされる人は、ノルアドレナリンやドーパミンなどの物質を分解する酵素が遺伝的に少ないといわれています。

遺伝のためどうにかなる、という訳ではありませんが、このことも確証を持ったものでもありませんので悲観する必要はありません。

ただ、本来あるべき分解酵素の量よりも少ない量ならば、ストレスを感じた時にノルアドレナリンやドーパミンなどを処理しきれないため、それらの物質の濃度が高いまま維持されやすく、前頭前野の活動も低下しやすいことにつながります。

長期間のストレス

遺伝的な要素とは別に、長期間にストレスを受けている人の脳内でもストレスが処理しにくい変化が起きます。

長期間ストレスにさらされると、前頭前野の脳細胞は徐々に働かなくなり神経そのものが萎縮していきます。神経が萎縮してしまうと、それだけ色々な変化に対して処理をする能力が衰えてきますので、ストレスに対してさらに弱くなってしまいます。

しかしながら萎縮した神経は、ストレスから解放されると再生して元通りになっていきますが、それらを常時繰り返していると段々と再生が難しくなって萎縮したままになるとも言われています。

これら一連の現象はストレスに対しての脆弱性といわれて、例えば本来は50のストレス具合でストレスと脳が感じるところを、ストレスに脆弱になってしまうと20とかで本来はストレスとしてそこまで反応をしなくても良いレベルでも大きなストレス反応を示してしまうということになります。

ストレスへの科学的で有効な対策とは

ストレスへの対処方法は様々ありますが、ここまで述べてきたことに基づいて科学的に解明されている対処法というものは残念ながらまだありません。

その理由として、仕組み自体もあくまでも仮説や、その可能性が高いということであるし、実際のところ生きた生身の人間を実験するには倫理的にも難しいという観点からなかなか確証を掴むまでは至っていないからです。

ただ、落ち着いた時間を過ごしたり、趣味に没頭したり、家族と触れ合ったり、その人その人で楽しい・幸せ・心地よいと感じる要素が違うため一概には言えませんが、そのような感覚を覚えることを行うことがストレスとうまく付き合う方法でしょう。

生きていればストレスは不可避ですし、一定のストレスは必要なものです。ただ、それが過度になると良くないので、ストレスとリラックスのバランスを常に客観的に観察しながら過ごしていければストレスとうまく付き合えるでしょう。

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