生理痛は一般的な名前として知られていますが、医学的には生理は月経と呼び、生理時に不調になる事を月経困難症といいます。
月経困難症とは生理時の痛みのみならず、生理時に起こる頭痛や胃痛、お腹の不調や生理前にイライラしたり落ち込んだり過食になったりといった生理の時に日常生活に支障が出るような不調を広い意味で捉えています。
また、月経困難症には原因がない機能性月経困難症と、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因で起こる器質性月経困難症に分けられます。
機能性月経困難症
機能性月経困難症は国内の文献では初経後2~3年より起こることが多いとされていますが、アメリカの米国産婦人科学会では初経の6~12ヶ月後より起こるとされています。
いずれの場合でも思春期から20代前半の年齢に多くみられ、検査をしても特筆すべき原因が見当たらないものになります。
よくみられる症状
月経初日~2日目で出血量が多い時期に痛みが強く現れる傾向にあり、痛みとしてはキューッとするような痙攣性の痛みでかつ、周期的なものであることが多いようです。
このような痛みが引き起こされる原因としては、プロスタグランジンという物質が大きく関係しています。
プロスタグランジンは、排卵が起こることで受精の準備を始めるために子宮内膜が厚くなってきますが、その厚くなった子宮内膜で作られます。
そして着床がないと子宮内膜は剥がれ落ちていきますが、その際にプロスタグランジンが子宮を収縮させて経血を押し出していきます。
この時にストレスや体調不良など何かしらの原因によってプロスタグランジンの作られる量が多くなり過ぎてしまうと、プロスタグランジンは子宮を収縮させる働きがあるために過剰に子宮収縮が起こり、先述のような痙攣性で周期的な痛みが引き起こされます。
また、子宮の出口が狭くなっている人ではきちんと経血を排出するために押し出す力がより必要になるため子宮の収縮が強くなり、そのために痛みも増強してしまいます。
さらに腹痛だけではなく頭痛や下痢、悪心などの全身的な不調は、プロスタグランジンやそれを代謝する物質が全身の循環に流入することで体の至る所で不調が起きていきます。
プロスタグランジンとは
プロスタグランジンは体内の至る所で作られている物質です。
主な働きとしては子宮や気管支などの収縮、血管の収縮や拡張、胃酸分泌の低下など多くの働きを行います。
ホルモンと似たような働きをしますが、ホルモンは全身に作用するのに対してプロスタグランジンは局所的に作用するため局所ホルモンとも呼ばれて、その特性を利用して分娩誘発剤などに使われたりもしています。
器質性月経困難症
機能性月経困難症が何か原因があるものではないのに対して、器質性月経困難症は何かしらの原因があるために月経困難になっている事をいいます。器質性月経困難症に罹る人は30歳以降によくみられるとされています。
器質性月経困難症の原因となるものには、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣嚢腫、奇形など様々な疾患があります。中でも子宮内膜症や子宮筋腫はよくある原因として言われています。
子宮内膜症とは
子宮内膜とは本来は子宮の内側にありますが、何かしらの原因により子宮の内側以外で内膜が発生して育ってしまう病気で20~30歳代で発症することが多く、30~34歳に最も多くみられています。ただ、最近では10代のうちに発症するケースもそれなりの比率でみられるそうです。
子宮内膜は通常は子宮内で育ち肥厚していき、着床しなければ肥厚した内膜組織は月経の際に経血として排出されていきます。
しかしながら子宮内膜症では、子宮の内側以外の至る場所でその現象が起こるために剥がれた内膜組織を排出する場所がなく、その場で血液が留まり炎症を起こしたり、周りの組織と癒着して痛みを引き起こすようになります。
子宮筋腫とは
子宮は妊娠して胎児が発育するにつれて進展していきますし、反対に生理時には収縮して経血を排出します。
このように子宮の役割を果たすためには伸縮性が必要で、それがなければ十分な機能を果たせないために子宮の特に上部では伸縮性に優れている平滑筋という筋肉の層によって構成されています。子宮筋腫とは、この平滑筋に発生する良性の腫瘍のことをいいます。
子宮筋腫には筋腫ができる部位によって区別されています。
筋層内筋腫
まず最も多いケースが筋層内に出来る筋層内筋腫です。このケースは子宮筋腫の中でも約70%の割合に当てはまります。文字通り子宮の筋層内に出来るもので、小さい分には特に症状が出ることはありませんが筋腫が成長して大きくなっていくと不正出血や流産などの原因にもなるとされています。また、多発しやすいという特徴もあります。
漿膜下筋腫
次に漿膜下筋腫というもので、子宮の外側の膜内に筋腫ができるものでこちらは子宮筋腫の約10~20%の割合に当てはまります。この部位に起こる筋腫の特徴としては外側に向かって大きくなるために成長するスペースがあるので巨大化しやすく、小さな段階ではほぼ無症状で症状を自覚する時には下腹部にしこりを感じるくらいに大きく成長していることが多いようです。
粘膜下筋腫
最後に粘膜下筋腫というもので、こちらは子宮の内膜に筋腫ができるもので子宮筋腫の約5~10%の割合に当てはまります。このケースでは内側に向かって成長するために子宮への影響が大きく出るため他のケースよりも症状が現れやすく、強い月経痛や過多月経が起こりやすいとされています。また、早産や流産などの原因にもなる他、不妊の原因にも大きく関わるといわれています。
子宮筋腫の中にも主に3つの種類がありましたが、いずれのケースでも腫瘍と聞くとガンのような恐ろしいイメージがありますが、ガン細胞は自分自身で増殖して成長することが可能ですが、子宮筋腫の腫瘍はエストロゲンというホルモンがないと成長していくことができません。そのため、閉経になるとほとんとエストロゲンの分泌がされないために顕著に筋腫が小さくなっていくという特徴があります。
器質性月経困難症は、上記以外の疾患でも先述したように子宮腺筋症や卵巣嚢腫など様々な疾患が原因で月経困難症となっていますが、特に子宮内膜症や子宮筋腫が原因となっているものが多いとされています。