今回は腕の痺れの症例です。
症状としてはここ最近左腕に痺れが出ていて、それが指先にまで及んでいるというものです。
具体的にはふとした瞬間に左の肘から指先まで(指は全ての指)が痺れて、同時に左の肩や首も痛むということです。
ちなみに右側は全く症状はありません。
そこでまずはどのような病態か考えてみることにします。
この際には過去の病歴やケガの有無などを尋ねるとヒントがたくさん隠れていて、今回は過去に大きな交通事故を起こしてから頚椎ヘルニアになったということでしたので、おそらくその症状ではないかと思いました。
次に首を上に向いてもらったり、指先の動きの悪さや母指球の筋力が低下していないかなどヘルニアの重要な症状を確認しましたが、今回のケースでは首を上に向けると痺れが誘発されること以外は重症と思われるような所見はありません。
それらを加味すると、おそらく頚椎ヘルニアの軽い症状か、頚椎症によるものだと思われます。これら二つは頚椎の椎間板の変化が神経に悪さをするのか、それとも頚椎そのものが神経に悪さをするのか、の違いなだけで起こる症状や事象は同じです。
これらを考慮して早速治療に取り掛かります。
まずは頭のツボに一つ鍼をして、痺れの症状の大元である頚椎の神経の周囲にある硬さを取り除きます。
この時点で肩や首の痛みが7割程度改善して、同時に腕の痺れも最初は三つのラインに痺れが出ていたのが一つに絞られました。
次に耳の近くにあるツボに一つ鍼をして、残っている肩や首の痛み、そして腕や指先の痺れの処置を行いました。
ここまでの処置で肘から指先にかけての痺れ、首や肩の痛みは全て改善できました。
そして治療を終えた後に自宅で出来るセルフケアを伝えるために、日頃どのような作業やどういう生活習慣があるのか話をしていくと意外なことがわかりました。
それはうつ伏せで本やタブレットを見ているというもので、その姿勢は頚椎ヘルニアがある人にとっては非常に悪い姿勢です。なぜならばうつ伏せで何かを見るときには、首は必ず上を向いた状態になっています。うつ伏せになっていると気づきにくいですが、うつ伏せでものを見る姿勢のまま、首の位置を変えずにそのまま起き上がると首が上を向いている状態になります。
これは頚椎ヘルニアの圧迫を強めたり、頚椎症における神経の圧迫を強める良くない姿勢です。
このことを説明して、今日以降はうつ伏せで何かを見るということはやめてもらいました。座ったり横になって見ている方がよほど頚椎に負担がかからないので、そのようにして過ごしてもらうこともお話ししました。
もちろん正しい姿勢で行うことがベストなわけですが、あまりギチギチにルールを作っても精神的に負担になることもあるため、最も大切なことはまずは最も悪いことをしないことが重要です。
今回のケースも最後のやり取りまで行わなければ、また同じ症状が出て結局治らないことだったでしょう。
毎回お話ししているように、大事なことは個人個人で原因や気をつけることが全然違うので、その人に見合った治療や提案を行うことが症状の改善をする上で最も重要なことです。