今回の症例は踵の痛みです。
左の踵が数ヶ月前より痛み出して以来、徐々に痛みが悪化しているという状態でした。ちなみに右の踵は全く問題ありません。
踵の痛みの原因としてよく診られるのは足底筋膜炎やアキレス腱やふくらはぎの硬さ、坐骨神経痛、その他内臓関係ならば腎機能の低下やホルモンバランスの乱れなどがあります。(今回の症例は男性ですが、女性では特にホルモンバランスの乱れからくる踵痛はよく診ます。)
それらを考慮しながら問診を始めると、日常生活上で痛むことはそこまでないけれどゴルフをした後や自分で踵を押すと痛みを強く感じるということでした。
そしてまずは腰痛の有無を尋ねると腰痛はないし、足が痺れたり痛むこともないために坐骨神経痛ではなさそうです。踵痛でも坐骨神経痛の一環で起こることは度々ありますので、まずはそれを考えました。
次に踵付近を入念に診ると、右に比べて左の踵がやや腫れていました。ただ、強い炎症のような感じでもなく熱もありません。
そこでアキレス腱の硬さを調べると右に比べて左の方が縮こまっていて硬くなり、きちんと伸びきらない状態でした。
アキレス腱は踵についているためにアキレス腱が硬くなったり、アキレス腱に関わるふくらはぎの筋肉が硬くなると踵が引っ張られてしまい、そのことで炎症が起こり痛みに繋がります。
今回はそれが原因のようでした。
治療はふくらはぎやアキレス腱が緩まるような処置をして、かつ腰骨の詰まりも同時に出るためその部分も処置をして痛みを取りました。もちろん治療後は踵を相当押し込んでも痛みは100%から残り10~20%程度になったので、数日もすれば落ち着いてなくなっていくことでしょう。
ここまでは普通の流れですが、大切なのはなぜ左のアキレス腱が硬くなってしまうかということです。なぜならばその原因が分からないと再び痛みが出てくることは目に見えているからです。
それを考えていくと普通はアキレス腱が硬くなっていれば、ふくらはぎの腓腹筋という筋肉も同時に硬くなります。そのような状態ならばふくらはぎのストレッチなどで対応すれば問題ありませんが、今回はアキレス腱は硬いにも関わらず腓腹筋はそこまで硬くありませんでした。
そうなるとおそらく足の関節の動きが悪いためにアキレス腱が硬くなっているだろうと思い、過去に左足首をケガしたことがないか尋ねると詳細は覚えていないが左足首を相当に痛めたことはあると言っていました。
それが原因で足関節の動きが悪くなりその分アキレス腱にも無理な力がかかり、それが限界を超えたことで痛みが出たのでしょう。
案の定治療後にセルフケアとして足関節のまわし運動をお伝えしましたが、右足関節と比べると左は一定の角度になると動きが悪くスムーズに回すことが難しいようでした。
今回の症例ではそれを改善することでセルフケアになる上、将来の痛みの予防にも繋がります。反対にこれをしなければまた強い負荷がかかると痛みが出ることでしょう。
このようにやはり一人一人の最適解が異なるため、その場で治す・改善させることだけが治療ではなく治療後のセルフケアなども含めて本当の治療だと私たちは改めて感じています。