今回の症例は右肩の痛みです。
数週間前から腕を上げたり下げたりすると右肩に痛みが出るようになったということで、痛みを感じ始めてから放置していても一向に良くならないため来院されました。
きっかけは特に思い当たることはなく、なぜ痛みが出たのかわからないという状況です。
そこでまずはなぜ肩が痛くなったのか原因を探していかなければなりません。
肩が痛むのは右だけで左は全く痛くないことに加えて、背中や腰も右側が張ったり痛むこともあるがこちらも左側はないそうです。
肩ということをひとまず置いておいて、体の右側だけに痛みが集中するのは肝機能の異常であることが経験上とても多いです。
そのため肝機能の異常を検診で指摘されたことや肝臓の病歴の有無などを尋ねましたが、それらはありませんでした。
次に肝機能の異常を引き起こす要因として主にお酒、ストレス、常用している薬の有無がありますが、それらについてもお酒は飲むけれど体に強く影響が出るほどの量でもありません。
ただ何かしらの原因が必ずあると思い色々と尋ねていくと、最近は筋トレに没頭していてボディビルの大会を目指すほどにやり込んでいるということがわかりました。
筋トレをすると筋肉からマイオカインというホルモンやペプチドの各物質が分泌されて、それらが肝臓に届いたら中性脂肪をエネルギーへと変換する作業が促進されることがわかっています。よって肝機能が一時的に促進されるので、今まであまり筋トレをしていない人が急にハードな筋トレを行えば肝機能にも一時的に負荷がかかります。
この現象が右肩の痛みの一因となっていると思い、肝臓を中心とした処置を行うと予想通りほぼ痛みが消えました。
最後に若干痛みが残りましたが、それは筋肉の一部の硬さだったためそこを緩めるツボを使い処置を行うと右肩の痛みはあらゆる動きをしても出なくなりました。
今回の右肩の痛みの原因は肝臓が7割、筋肉の張りが3割という感覚でしょうか。
このように右肩の痛みといっても原因が色々なところにあることがお分かりいただけたと思います。
だからこそ右肩の治療という視点よりも、その人がなぜ右肩が痛いのかという視点で治療をしないと成果が出ないのです。
症状ではなく人を診ることは非常に難しいですが、その一つ一つの経験がいつか皆さんのお役立ちができる力になると信じて治療をする日々です。